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白樺林のフラクタル
俺は、心を病み静養のためにサナトリウムに身を置いていた。
そこは人里離れた静かな場所で、時間だけがゆっくりと流れているようだった。
その時の日課は、庭の散策と、図書室で古い本を眺めること。
ある日、俺は図書室で一冊の古びた数学書を見つけた。無味乾燥な数式と記号の羅列。しかし、なぜかその本に惹かれ、読み進めるうちに俺は次第に数学の世界に没頭していった。
難解な定理を理解しようと格闘する日々。複雑な計算問題を解き明かした時の喜び。
それはまるで、心の中の絡まった糸が解きほぐされていくような感覚だった。
数学は、俺にとって現実から逃避するための手段であり、同時に自分自身を取り戻すための道標でもあった。
サナトリウムでの生活は続き、俺は数学とともに静かな時間を過ごした。外の世界から隔絶されたこの場所で、俺は自分自身と向き合い、少しずつ心を回復させていった。