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箱入り姫と6人の騎士 ③
赤都 乃愛羽
〜第3話:崩壊する絆〜
「……っ、ふざけんなよ!!」
静まり返った病室に、ころんの怒号が響いた。ころんはるぅとの胸ぐらを掴み、そのまま壁に激しく叩きつける。
「お前一人がヒーローにでもなるつもりかよ!? ちぐを救って、自分だけあいつの体の一部になって……残される俺たちの気持ち、考えたことあんのかよ!」
「……離してください」
るぅとは抵抗もせず、冷めた瞳でころんを見つめ返した。その冷静さが、余計に周囲の感情を逆なでする。
「離さない! お前が死んだら、ちぐは一生自分を責めるんだぞ! そんなの『救い』でもなんでもねぇだろ!」
「じゃあ、このまま彼女が死ぬのを黙って見てろって言うんですか!?」
るぅとが初めて声を荒らげた。その瞳には、狂おしいほどの悲しみと決意が混ざり合っている。
「適合するのは僕だけなんだ! 僕が死ねば、ちぐちゃんは生きられる! だったら、答えは一つしかないじゃないですか!」
「いい加減にしろ!」
二人を引き剥がしたのは、さとみだった。だが、そのさとみの拳も震えている。
「……るぅと、お前の言い草はただの自己満足だ。ちぐの体に自分を刻み込んで、永遠に縛り付けたいだけだろ。それは愛じゃなくて、呪いだ」
「呪いでもいい……!」
るぅとは床に膝をつき、顔を覆った。
「彼女が生きていてくれるなら、僕を恨んでも、呪ってもいい。……ただ、あの笑顔を消したくないんだ……っ」
「……みんな、やめてよ」
莉犬が、ちぐのベッドの横で声を殺して泣いていた。
「ちぐちゃんがこんなの聞いたら、悲しむよ……。でも、俺……るぅとくんがいなくなるのも、ちぐちゃんがいなくなるのも、どっちも嫌だよぉ……」
最年長のななもり。は、怒鳴り合うメンバーにも、泣きじゃくる莉犬にも声をかけられず、ただ真っ白な顔で立ち尽くしていた。
「……俺たちは、ちぐを守るために集まったはずなのに。……なんで、バラバラになっちゃうんだよ」
ジェルは窓の外を見つめたまま、低く呟く。
「……結局、俺たちは誰も、ちぐを幸せにできないのかもな」
かつて最強の絆で結ばれていた6人の騎士。
だが、一人の少女の命という重すぎる天秤を前に、彼らの絆は音を立てて崩れ始めていた。
病室のベッドで、ちぐだけが何も知らず、浅い呼吸を繰り返している。
彼女の命を繋ぐための「最悪で最高の選択」が、彼らを修復不能なまでに引き裂こうとしていた。