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僕たちは、信号機
白く無機質な病室の窓辺には、いつも3つの小さな植木鉢が並んでいた。
僕、アオと、ハルと、アキ。同じ小児病棟で出会った僕たちは、いつしか自分たちを「信号機トリオ」と呼ぶようになった。青色の鉢はいつも前を向いて歩く僕、黄色の鉢はみんなを照らすムードメーカーのハル、赤色の鉢は静かにたたずむアキ。
「ねえ、3人揃えば、どんな交差点も怖くないよね」
ハルがいつものように無邪気に笑った。僕たちの病気は、どれもゴールが見えない暗いトンネルのようだったけれど、3人でいる時間だけは、外の世界の青空よりも輝いていた。
けれど、季節がめぐるのは早すぎた。 最初にアキの赤信号が消えた。静かに、だけど燃え尽きるように。 次にハルの黄信号が、小さく明滅したあとに眠りについた。
最後に残されたのは、僕の青信号だけだった。
「なんで僕だけが、進まなきゃいけないんだよ……」
一人きりの病室で、僕は2つの空っぽの植木鉢を抱きしめて泣いた。3人組(トリオ)じゃないなら、もう前に進む意味なんてない。そう絶望していたある日、看護師さんが1通の手紙を届けてくれた。ハルが遺した、最後のメッセージだった。
「青くんへ。僕とアキの信号は止まっちゃったけど、それは青くんに『ずっと進んでいいよ』って伝えるためだよ。3人分の未来を、青くんが歩いて。僕たちはいつだって、君の心の中で点滅してるからね」
窓辺を見ると、ハルとアキの鉢植えから、小さな緑の双葉が顔を出していた。
僕は涙を拭い、車椅子から立ち上がる。足元はまだおぼつかないけれど、窓の向こうには、果てしない青空が広がっていた。
「行ってくるね」
僕の胸の中で、今も3人の信号は、優しく、強く、輝き続けている。