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Tough cookie!
【譚狸隊軍露日】に続かない【人間らしい正義のカタチ】(すい 様)の二次創作になります。
全体的にダークで、どちらかというとこちらの趣味全開です。
「女ってのは、大変だな」
汗の滲んだタオルを見ながら、そう呟いた。
「だって、少女ってだけでサティロスとかいう化物を相手する機会があるんだろ?」
そこから続けて思ったことを口に出した。
隣で座る齢15歳もいっていなさそうな少女は神妙な顔をして、何も言わない。
自分と同じ年齢の女が、魔法少女なんて役柄を請け負って死んだって何も言わない。
自分のことじゃない。どうでもいい。そんなところだろう。
守られる側が正義のヒーロー様をどう思おうと、勝手な話だ。
「…アンタは、どう思うの?」
少女が話題を返した。ひどく面白がるような顔だった。
「別に。魔法少女って肩書きがある以上、男には関係ない。あんなヒラチャラ、男が着てみろよ。嫌だろ?」
「あたしはそういう話をしてるんじゃないけど」
「じゃあ、なんだよ」
「ただ、単に…女性が大変とか、そういう差別的なことじゃなくて…あの子達って、いつまで戦うんだろって、思って、それで…」
「そりゃあ、|サティロス《怪物》が皆死ぬまでだろ」
「…そのサティロスにも戦う理由があったら、どうするの?」
「はぁ?…売女なくせに、小難しいこと考えるんだな、お前」
「……アンタ、本当に…」
「ああ、悪かった、悪かったよ。その綺麗な顔、歪ませて怒らないでくれ」
首に手を回して抑えたつもりの腕が身体ごと突き飛ばされる。
どうやらダメらしい。気難しい女だと思うが、なんとなく加虐心に駆られた。
床に尻もちをついたまま、口を開く手前で激しい揺れと衝撃に襲われ、不意に上を向く。上に設置されたランプが外れて風を切るような音に思わず目を瞑る。
何か自分よりも小さい身体が入るような感覚と鈍い物音が瞼の奥で響いた。
やがて、うっすらと瞼を開き、腕の中で頭が切れた少女が目に入る。
先程の威勢はなく虚ろな瞳で身体も柔く愛しい唇も動こうとしない。
口の中で舌打ちが弾けた。急いで身体を起こして、腕の中の少女を丁寧に抱え込む。
荷物も置いて寝床とシャワーしかない部屋の扉を開けようとし、つんざくように耳に大きな爆発音が響いた。
その衝撃のせいか壊れた扉を蹴り破いて、部屋の外の惨状を目に映す。
遠くで古ぼけた軍服に身を包む狸のような化け物と、似たような軍服だが、真新しい深緑の短い髪をした少女が戦っている様子が見える。
|斗霧 芽衣《ミール・リーフェーズ》とかいう|正義のヒーロー様《魔法少女》に守ってもらえるなら、光栄なことだ。
運の良さにほくそ笑んで、滑るように建物から飛び出す。
周囲を見回して、少女の首筋に手を当てる。弱々しいが、確かに動いてはいる。
ズボンに手を突っ込んで携帯から言葉を向こうの相手にぶん殴った。
何も言わずに戦う目の前の魔法少女にこの時ばかりは感謝を述べようと考えた。
腕の中の少女や例の魔法少女然り、どちらもなんとなく、強い女性だという考えが現実的に冷えた脳の中で暖かく光のように駆け巡った。
Tough cookie = 強い女性