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寄り道~ドーナツの向こう側は青空~
ドーナツ、食べたい。
なんて事を授業中に考える|有瀬 春音《あるせ はると》、高校一年生。高校に入学し早3ヶ月。なんだかんだ話す事のできる友人ができているし、それなりに充実した日々を送っている。
昼休みに母さんが朝早くから作ったお弁当を食べ、今は6時間目の半分をすぎた辺り。集中していたのかふと、小腹がすいてきた。何故か連想ゲームのようにあれやこれやと浮かんできては消え、最終的にドーナツに行き着いてしまった。なんでだろう?
「なぁ照、帰りにドーナツ食べに行かね? 」
「珍しいね~春音がそんなこと言い出すなんて」
「あ~何となく? 」
そんな感じでドーナツを食べに行くことになった。甘いものが食べたくなったからであって特に深い意味は無い。
残りの授業はほとんど聞いていなかった。板書や重要な所はノートにまとめてあるしいいかなって思って。ポヤァ~と過ごしていた。てか、スゴく暑い。何故かこの前、教室のクーラーがぶっ壊れた。そのせいで僕らのクラスは扇風機が4台稼働しているだけである。無いよりはまし。ぬる~い風がそよそよと吹いている。
そうして放課後。
この前アイスを買いに行ったスーパーのとなりにドーナツ屋がある。僕が小さい頃からある小ぢんまりとしたお店だ。そこへ向かう。外に出ても暑い。梅雨が空けて蝉の大合唱。空は澄みわたった青空。そりゃ暑いわけだ。
「暑い……」
「ドーナツ食べに行くんでしょ? 」
「まぁーそうだけど。にしても暑い」
「暑いしか言わないじゃん」
そんなこんなでドーナツ屋『にじゅうまる』に着いた。
「いらっしゃーい」
「あら、春ちゃんじゃない、久しぶりねぇ~」
「お久しぶりです。|二瀬《にのせ》さん、ドーナツ、食べに来ました。」
「春音、知り合い? 」
「あぁ。小さい頃からドーナツといえばここのドーナツだったから」
「そうなんだ~」
メニュー表を見ながら何にするか考える。
今日はプレーンとチョコチップのやつにしようかな。
「何にするか決めた?」
「プレーンとチョコチップのやつ1つずつください」
「おれはチョコと抹茶にしようかな~」
「出来上がるまで時間がかかるからどっかテラス席にでも座っててね~」
この店は室内に席がない代わりにテラス席があり、基本的に外で食べるのだ。
「そういえば、春音さ、この前のテストどうだった? 」
「良くも悪くもなくいつもと変わらない。凡ミスばっかり」
「そんなこと言って~、結構公共とか成績良かったの知ってるからね? 」
「勝手に人のテスト見たのかよ。」
「見てない、見てない。チラッと見えただけ。」
「見てんじゃねーか。つつくぞこら」
「暴力はんた~い」
いろいろと話しているうちに甘い匂いが漂ってきた。
「はい!どうぞ~」
「「ありがとうございます」」
ホカホカなドーナツが2つずつ。飲み物はお水。トレーに乗せてもらってうけとった。テラス席に腰かけて、プレーンドーナツから食べる。大きさは手のひらより少し小さいくらい。表面がサクッとしてて中がフワッとしてる。ほんのり甘くて、いくつでも食べられそうなくらいおいしい。やっぱりいつ食べても変わらないなぁ~と思った。
今度はチョコチップドーナツを手に取る。なんとなく穴から外の景色を覗いてみた。ちっちゃい頃よくこんなことして母さんに怒られていたっけ。丸く縁取られたドーナツの向こうは限りなく青空。白い雲が遠くで流れてる。
何かこんな感じの曲なかったっけ?
まあ、いいか。
「何してんの? 」
「なんかやってみたくなったから」
「ふ~ん。ドーナツさ、スッゲーおいしい! 」
「そりゃぁよかった」
ドーナツを1口。チョコチップの食感が変わった食感を生み出していてこっちもおいしい。すぐに食べきってしまい、ただ、青空を眺めていた。
照も食べきったらしく自分が持っていたトレーを返しに行った。僕もトレーを返しに行く。
「二瀬さん、ありがとうございました」
「あらぁ~いいわよ~また食べにおいでね! 」
「では、また来ます」
「勉強、頑張るんだよ! お友達もね」
「あ~、がんばりま~す」
少し日が傾き始めた空はまだ少し青かった。
「じゃ、また明日。宿題ちゃんとやれよ? 」
「うぃ~。ちゃんとやるよ。また明日。」
「はぁ~夏休みまであと少しか~」
「それな~」
夏休みまであと数日。彼等はまだ宿題が大量に出されることをまだ知らない。宿題がなかなか終わらず地獄を見るのはまた別のお話。
比較的会話文が多い気がします。
ドーナツって揚げるのと焼くのとどっちが一般的なのかは分かりませんが、焼いてある方が好みなので焼きドーナツになりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。