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はやくにげなきゃ
『
「マジでヤバいって……」
いつもの口癖。でも状況は死の淵同然。
片手にはさっきまで一緒に生きてた先輩からの形見の書類。
先輩はさっき、"アイツ"の気を逸らすために別れた。
アイツが何匹いるかはわからないが、先輩の無事を祈るしかない。
そもそもなんでこんな事に巻き込まれたんだっけ。あぁ、そうだった。確かこの研究所、上の奴らが地下で人体実験してたって噂があって、それがマジだったんだっけ。
突然俺達の研究室に現れて、みんなを食い始めた。唯一逃げられたのが、おれと先輩だった。
だけど、先輩も逃げ切れなくてアイツに……
「速く逃げなきゃ……」
振り返れば、アイツに襲われて死ぬ事はバカにでもわかる。
体長は2メートルほど、見た目は異形だが、どこか幼い子供のようにも見える。
「……マジでちっちゃい子供だったら、ちょっと可哀想だよな……」
でも、今は異形。逃げないと殺される。
そう思いながら、カードキーを手に取った。
スライド型ドアを開けた。
「ひっ!!!」
アイツの赤く染まった歯まで見える。
マジでヤバい。直感してすぐ逃げた。
一つ角を曲がったところで、目が合った。
逆光に照らされた化け物と。
<【|隕九▽縺代◆《見つけたよ!》】
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
今来た道を全力で走り出した。
見つかった。速く出ないと、死ぬ。
「速く逃げなきゃ……速く逃げなきゃ……」
「マジでヤバいって……マジでヤバいって……」
何度も、暗示のように繰り返す。
見つかっては走って逃げてを繰り返す。
何匹もいる。絶対。あと2匹は確実にいる。
だけれど、遂に、隠れるしかなくなった。
アイツは知性がある。気付くのも時間の問題だった。
「……クソ……」
ふと、後ろから金属の音がした。
振り返るとあったのは、点検口。
小さめの人なら這ってなら入れそうな大きさ。コンプレックスだったけれど、ここで役に立つんだな……
意を決して、点検口に入った。
それでも、ガリガリの人間みたいな細さのアイツは追ってくる。
一度、振り向いたが、ホラーゲームでしか許されないような地獄絵図のそれだった。
どうやら、地下に降りられそうだ。
「良かった……」
取り敢えず撒ける。そうしたら、あとは裏口から出て、救助を呼べる。
そうして、下に降りた。通路には白い何かが着いていた。嫌な予感がした。
「……っ……!?」
降りたら、アイツらに囲まれていた。
そうだった。地下で実験した末に生まれた化け物だから、当然地下にいるんだ。
肝心なことを忘れていた。
もう、逃げる体力なんて、残っていなかった。
「ひっ……!来んな来んな来んな!!!」
一生懸命言い放つ。だけれど、威勢の良いだけのチワワは、大人数のライオンには勝てないのは当然の事だった。
先輩が遺した書類はもう、たった1枚しか残っていない。他は全部落としてしまったのだろう。
ふとそれに目をやると、それは子供の絵。
化け物と、何かを持つ先輩。
何かを考える余裕はもう無かった。
「……いやだ……死にたくない……死にたくない……」
「……しに……たく、ない……」
そう言った瞬間、おれの頭は吹っ飛ばされた。
サッカーボールを蹴るみたいに。
自分の体が喰われてる。自分がさっきまで着てた白衣が揺れている。
それを見届けるなんて体験、したくなかった。
そういえば、どこかで聞いた事がある。
人間は首が飛んでも、数秒は意識はあるって。
死の直前に、そんな事、思い出したくはなかった。
<【|譌ゥ縺城??£縺ェ縺阪cwww《早くここから出なくちゃ!(笑)》】
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』
「……ひどい……」
「……うん。」
2人の少女はそう言うしか無かった。
ビデオ名は『研究者、未来の最期の記録』。
ここで視点となっている研究者は、未来さんという方なのだろう。
2人は、肝試しでここに来て行方不明となった友達を探すために来た。
「……ところでさ。」
突然、切り出したのはショートカットの気弱そうな少女だった。
「…?」
「多分これ、未来さんが撮ってたんだよね?」
答えたのは聡明そうなポニーテールの少女だった。
「視点的にそのはず。あの化け物……"雨衣"が撮っていたら、未来さんが気付かない訳が無いよ。」
__「じゃあ、なんで……」__
ショートカットの少女は続ける。
「……なんで、地下で亡くなった未来さんが撮ってたビデオがここにあるの?」
ポニーテールの少女は気が付いた。
体を喰われた死体がここにビデオを持ってくる事なんて絶対に出来ないはずだ。
つまり、持ってきたのは……
ふと隣を見ると、隣にいたはずのショートカットの少女が、
最期の未来のように、
頭だけになっていた。
<【|隕九▽縺代◆《見つけたよ!》】