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届かないので
目当ての本まであと数センチ。背伸びをしても届かない。脚立を使えばいいのだが、エースは使わない。もっと便利な方法があるからだ。
「マレウス先輩」
「呼んだか、トラッポラ」
どこからともなくマレウスが現れた。
マレウスではなく高い本棚を見ながら、エースは願う。
「あの本、取ってほしいの」
マレウスは長身を活かして、本をすっと取った。
「どうぞ」
「ありがと」
本をもらおうとマレウスに差し出すエースの手。逆に取られて、手の甲にキスを落とされる。イジワルな本棚よりも自分を見ろと言わんばかりに。
脚立を用意するよりもずっと早くて、オマケも手に入る。これ以上に便利でかわいい恋人はいない。