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【第一章】3.突撃!駐輪場
学校からの帰り道、駐輪場の近くに翔太の後ろ姿を見かけた。声をかけようかと迷ったが、背が低い女子と喋っているのが見えたので少し遠慮する。
そのまま後ろを歩いていると、駐輪場に到着した翔太はその女子に手を振って別れ、チャリの鍵を取り出した。その隙を狙って後ろから突撃すると、翔太は珍しく『ぎゃあっ』という叫び声を発した。
「おっす翔太!!!!!!」
「うわ、星羅か。ビビったじゃん」
「うわとはなんだうわとは!」
翔太は『思ったこと言っただけだろ』と口角を上げると、チャリのロックを外す。私は近くに停めていた自分のチャリのダイヤルロックを外すと、彼と共に自転車を発進させる。
「さっきの女の子、可愛いじゃん。もしかして“リコ”ちゃん?」
「そ。いつもは一緒に帰ってるんだけどさー、塾ある日は帰れないんだよな」
「うわぁ、リア充」
チャリで坂を下りながら、翔太はサラッと『手なら繋いだよ』と言う。手を繋ぐ、という今の自分には現実感のない行動が近くで起こっているということに少し驚いた。
てか、付き合ってまだ二週間では…?いいのかそれで。
「星羅、今日塾来るんだっけ?」
「そう!一旦木曜日だけで様子見ってとこかな」
少し前に翔太が言っていた東陵個別塾、このことを母親に伝えてみたら体験を申し込んでくれた。その体験で雰囲気に惹かれ、そこに正式に入塾することに決めたのだ。今日は初回授業である。
「俺は来年から週三に増やすよ。今火曜と木曜だけだけど……来年受験だしね」
「うぉー……現実を突きつけないでくれぇ…」
「これが現実でーす、諦めなさい」
「無理!!!!!」
ぎゃあぎゃあ騒ぎながらチャリを15分ほど漕ぎ、家に着いてからカバンと塾用のカバンを入れ替えて、もう一度二人で騒ぎながら塾の方向へ出直した。