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    7.箒さん…好き!!!
    
    
        7話目は飛行術の回です。
先生
スリザリンの監督生(トム以前が調べても出なかった)
この二人の名前はイギリスのよくある名前で調べてつけています。
今後、この物語の中で聞きなれない名前があったら大体そうやってつけていると思って大丈夫です。
    
    
    「はあ…」
暖かい日差しについあくびが漏れた。
いけないいけない。寝たらせっかく早く来たのに授業に遅れてしまう。
今日僕は、飛行術の授業のために中庭に来ていた。授業のためと言っても、飛行術が始まるまで約30分以上時間があった。
しょうがないじゃん!楽しみにしてたんだから!
そう、僕はめちゃくちゃ飛行術を楽しみにしてる。いつも少し遅刻しがちな僕が30分も前に着いてるなんて普通ならあり得ない。それを箒の為ならやって見せるぐらいには。なんなら今日の昼は中庭で食べた。飛行術は午後一番だったからね!!
とりあえずごみは片付けてしまおう、そう思ってサンドイッチが入っていた紙をぐしゃぐしゃと丸めてバスケットの中にいれた。僕、こういうの畳まない派だ。片付けは一瞬で終わった。そりゃそうだ。今日の昼はサンドイッチとお茶しか口にしてない。運動するからと思って、お茶は水筒の中に多めに入れてきたからまだ残っている。もう少し少なくても良かったかも…。飲みきれるかな?まあ誰かに手伝ってもらえばいいや。
そんなことを考えていると余計に眠たくなってくる。
う~ん。まあ少しだけならね。
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[トムside]
なにやってるんだ?こいつは。
僕が飛行術の授業を受けるために中庭に行くと、すやすや気持ち良さそうに寝るノアがいた。授業が始まる5分前だと言うのに。
僕はノアの鼻をキュッと軽くつまんだ。
「う~ん…、あと5分…。」
寝ぼけながら鼻声のノアが言った。
「始まるぞ。飛行術。」
トントンと肩を軽く叩くと、ノアがガバッと飛び起きた。
「飛行術は?!まだ終わってないよね?!」
「始まってすらいない。」
そっか~…と心底安心したという顔で息を吐いた。そんなに楽しみにしていたのか。
僕はノアがベンチで寝ていたせいで出来たシワを魔法でのばして、先生の到着を待った。
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「私は飛行術担当のイヴリン・ブラウンです。飛行術は…」
先生の自己紹介と飛行術についての軽い説明を聞いている間、僕はずっとわくわくしていた。待ちに待った箒!!家では箒ずっとを乗り回していたから、ホグワーツに来て全然乗っていない僕はそろそろ禁断症状が出そうだった。やっぱり1日でも開けたらだめだな。早く乗りたい。
先生の話はそんなに長くなく、早速箒を呼ぶ呪文を唱えてみることになった。
「箒に向かって“上がれ!”と言うのです。」
…僕の箒は?!
「せんせ~…。ほうき無いです。」
おずおずと僕が言うとああ!と申し訳無さそうに眉を寄せた。
「Mr.フォークナー、申し訳ないわ…。今取ってきます!」
自分で取ります、どこにありますか?と聞くとあの倉庫だと指差した。
「分かりました。…箒!!こっち来て!!」
僕が大声で倉庫に向かって言うと皆ギョッとした目でこっちを見た。トムを除いて。大きな声出してごめんね。家での癖で…。
2分ほど待って、箒は無事僕の元にやって来た。
よろしくね、箒くん。リボンがついてるし箒ちゃんかも。
結論。この箒、生きがいい。
早速とんでみよう!先生が言った瞬間箒がゆらゆら横に揺れた。リズムでもとってるの?取り敢えず飛びたい。僕がまたがり上がった瞬間、箒はおもむろにわくわくしていた。おもしれー箒っ。
僕は箒に、似た匂いを感じ取った。もー我慢できん!
「先生、ちょっと行ってくる!!」
「ちょっと!Mr.フォークナー、待ちなさい!」
僕はぐんぐん高度を上げた。久し振りの箒!!
それから僕は、地面すれすれに走ったり今できる一番早い速度で飛び回ったり、
とにかく自分の欲望を満たすため遊び回った。箒はめちゃめちゃ楽しんでいた。サイコー!!
他の人たちは、始めのうちはハラハラドキドキしていたものの、途中から慣れて自分の箒に集中した。先生も諦めたようだ。
「そろそろ終わりですよー!」
いつの間にか時間が来ていた。僕は今更気付いた。これ、スリザリンが減点されてしまうかも知れない。ヤバい!どうしよう…。
僕は恐る恐る地面に降りた。
「Mr.フォークナー。」
「はいっ!」
ほんとにまずいかも。何か策は…!
僕が悶々と考えているとブラウン先生は口を開いた。
「“行ってくる!”と元気よく言うので何かと思ったら…。スリザリンは10点減点とします。」
終わった。ごめんなさい。全力の土下座をかまそうとした瞬間、先生が再び口を開いた。
「…と言いたいところですが、あなたの箒捌きは実に見事でした。スリザリンは10点加点!」
なんか、点貰った。
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びっくりして放心状態の僕に、エイブリーがおもいっきりぶつかって来た。
「ノア、お前マジサイコー!!」
エイブリーが拳を前に突きだしていた。そこでようやく情報を整理仕切った。
僕は力の限りグータッチをしてエイブリーと肩を組んだ。
「エイブリー、お前なら分かってくれると思ってた!」
僕が大笑いしたところで授業が終わる。は~疲れた。風呂入りたい!僕は杖を自分に向けてスコージファイと唱える。汗と土汚れ、服の汚れもついでに落とした。
「あ!ずりぃ!俺にもやってくれよ~。」
エイブリーがぐりぐりと頭を首に埋めてくる。
「しょうがないな~。スコージファイ。」
あとで監督生の大浴場を借りることを約束して、次の授業に向かった。
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「おなかいっぱいだな。」
「わかるー。」
僕らは夕食を食べてすっかりまったり気分だった。…風呂!
そう思い出してエイブリーに耳打ちする。
『エイブリー、監督生に風呂頼も。』
エイブリーぐっと親指を立てる。監督生は今一人。今しかない!
「ウィルソンせんぱい。ちょっと良いですか?」
スリザリンの監督生、ジャスパー・ウィルソン先輩。ちょっと話したけど優しい人だった。この人なら行けそうだと思う。
「どうしたんだい。Mr.フォークナーにMr.エイブリー。」
穏やかな笑顔で僕らの方を向いた。
「ウィルソンせんぱい、監督生のお風呂貸してくれませんか。」
「ほう…それはどうして?」
「僕らとても疲れてて、久し振りに大きなお風呂にはいりたくなっちゃって…。」
えへへと笑う。お願い。合言葉を教えて。
「そうだなあ…。」
少し考えているようだった。心臓がドクドクと音をならした。
「ウィルソン先輩!このとーり!」
エイブリーも手を前で組んで祈るようにしている。
「しょうがないなあ。いいよ。」
「「やった!」」
僕らの声が重なった。ウィルソン先輩は小さく手招きした。耳を近付けろと言うことらしい。
『合言葉は…』
教えて貰ったものを頭に焼き付けて、ありがとう!と手を振ってその場を去った。
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「すげー!部屋のとは大違いだ!」
「そうだね!」
僕らは体を洗ってざぶんとお湯に浸かった。
「あ"~」
10歳の少年が出す声じゃねえとエイブリーに笑われた。
確かに。
「それにしてもつっかれた~。」
「それな。箒楽しいんだけどね。」
「それにしてもお前さ、すげーのな。箒。」
「まあ、家で乗りまくってたからね。1日降りない日もあったし。」
「よく体力持つな。」
「確かにキツいけど…慣れかな。箒にのるの、筋トレみたいなもんだし。」
「確かにお前、ムキムキ!どんだけ着痩せしてんの!」
「勝手につくんだよ~。」
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風呂からあがってほかほかの僕らは折角だから、と寮の空いてる部屋でお泊まり会をすることにした。でも、勝手に違う部屋で眠ると心配されてしまう。
「メモをドアの下から入れておけばいいだろ。」
そうだね、と相槌を打ってメモを書き始めた。
〔今日はエイブリーとノア、二人でお泊まり会をすることにしました。寮の中にはいます。明日の朝食のときには戻ります。〕
全く同じものを2つ書いて、1つはエイブリー達の部屋、もう一つは僕とトムの部屋に置いて、既に目をつけていた僕の部屋の隣の隣の部屋の扉を開けた。