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習作6
翳くん視点
ODなので一応R15
起きたまま夢を見る、ということは、あながち嘘ではないのかも知れない。
最初にそれを言い出した先人がどのようにして見たのかは知らないが、俺はこうやって見る。
俺の頭の中は矜羯羅がっているのに真っ白で、寒いような暑いような嫌な感覚が四肢の先端を刺し続けている。どこで見たとも思い出せない広告の文字がひっきりなしに脳の奥で流れ続けているかと思えば、身体の中身が全て白い綿菓子に取って変わられたかのような気にもなる。
視線をずらした。
網膜に焼きついた残像が補色の影を落とす。
残像は現実よりも鮮やかな色を垂らし、やがて消える。
支離滅裂が膨張する、あるいは停滞する。留まり、膨らみ、衰え、進み、幸福に、不幸に、
「翳!」
子供の叫び声。柔らかくまろい手。
瞬きした。残像はまだいくつか残っていた。
現実は思ったより鮮やかだった。残像より立体的で、匂いと温度があった。
窓の外では鳥が鳴き、隣では子供が泣いていた。
机上に目をやる。ぎ、と首が重い音を立てて、後頭部に固いフローリングの感触がした。
机上には錠剤と酒。
ああ、うん。まあ、そういうこともある。
「そんなに泣くことないだろ」
「だって、翳が死ぬかもって思ったから、だっ、て、俺、いやって言ったじゃん、これ、しないでって、ねえ、」
「…死にゃしないよ…」
風邪薬を大量に飲んだところで死なないんだって。
俺は子供の頭を撫でる。傷んだ髪はそれでも指通りが良くて、毛先が半端に伸びかけている。
切ってやればいいけど、酒入ってるんじゃなあ。
「かわいそうに」
誰に言うともない言葉はフローリングの床に落ちて溶ける。