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【こどおにっ!】序章のまた前の《2》
〜竜翔 side〜
天舞は、『俺、灯和に急ぐように伝えてくる!』と言って、瞬く間にお屋敷の方へと飛んでいってしまった。
火影「__……ふう……__」
竜翔「火影、大丈夫?疲れた?」
火影「……まだ平気だ。」
竜翔「……わかった。」
……誰もいるはずのない雪山に、一人の少女が倒れ込んでいた。火影に尻尾で支えられながら背負われているその少女は、右腕と左足に、深く矢が刺さっている。
竜翔「……ん。今のところ首も温めてるし、悪化はしてないね……でも、どうしたんだろこの子……」
火影「……わからん。ただ、これがただの矢でないのを見るに、ただの事故ではないんだろうな。」
火影の言うとおりだった。この子に刺さっているのは、退魔用の矢。よほどの妖力がない限り、ボクらには触れることすら難しい。
竜翔「……はやく灯和のとこ戻らないとね。」
火影「そうだな。私の妖力で止血はしたが、やはり治療が要る。」
そう言って火影は一度立ち止まって、少しだけ腕の位置を調節してからまた歩き始めた。それを隣で見ていたボクの中に、少しの心配がよぎる。
竜翔「……ねぇ火影。」
火影「なんだ。」
竜翔「……その……__大丈夫……?__」
火影「…………何がだ。」
火影は目を合わせない。おそらく、ボクの質問の意図には、もう気づいてるのだろう。
竜翔「……人間さん、怖くない……?」
火影「…………」
火影は、人間さんのことが好きじゃない。人間さんに化けて町へおりることもほとんどない。火影のなかで"ヒト"というのは、あまり良い思い出がないのだろう。
火影「……聞こえてるぞ竜翔。」
竜翔「えっ!?あっ、ご、ごめんっ!!」
火影はこちらを一瞥すると、小さくため息をついた。はいた息が、雪に溶けて白く染まる。
火影「……確かに、人間のことは嫌いだ。己の欲ばかりに目が眩み、他人を欺き、蹴落とし、私腹を肥やす者が大勢いる。」
竜翔「……そっか……」
火影「……だが、この娘に罪はない。この娘がどんな性向であろうと、今は治療を優先すべきだ……__それに。__」
竜翔「……?」
火影「__……人に見捨てられるというのは、考えているよりも辛い……私は、救える命は、できるだけ救いたい。__」
そう言ったきり、また火影は前を向いて、何も言わずに歩き出した。尻尾だけが、少女が冷えないようにと、少女の体にそっと寄り添っている。多分、火影自身は無意識にやっているが……過去の火影自身と、この少女を、どこかで重ねているのだろう。
竜翔「……ふふっ……」
火影「……?何が可笑しいんだ。」
竜翔「いや、やっぱり火影って、すっごく優しいなぁ……って。」
火影「……変なことを言うな。ほら、行くぞ。」
振り返らず、ぶっきらぼうにそう言い放った火影のふわふわとした柔らかな尻尾は、言葉の冷たさとは裏腹に、より一層優しく、少女の背中を支えた。
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〜天舞 side〜
天舞「灯和、これどこ置けばいい?」
灯和「えっとね、それの横置いといてっ!」
天舞「……おー。」
__カタンッ__
天舞「……なぁ。」
灯和「__ヒエッ、__な、なに……っ?」
天舞「お前ビビりすぎじゃね?んなビビんなくても、別に急に噛みついてきやしねぇよ人間は。」
灯和「怖いものは怖いんだもぉん……」
天舞「てかそもそも、相手は俺と同じくらいの怪我した女子だぞ?お前勝てるだろ!」
灯和「そりゃあ分かってるけどさぁ……(泣)」
__*カララッ……*__
竜翔「__ふうー……__ただいま。帰ったよ!」
灯和「*ひゃんっっ!!?*」
火影「天舞から聞いてるだろうが、これが問題の矢だ。灯和、どうにかなりそうか?」
灯和「えっと……これね……?ちょっと待って!」
竜翔「……どう……?」
灯和「ん〜……」
__***グッ……***__
灯和「……ん……っ!」
__***ズズ…ッ…***__
灯和「……しょっ!」
***ジュワッッッ!!***
灯和「……よし。消えた。」
天舞「……わぁ……やっぱお前、鬼なんだな。」
火影「妖力が比べ物にならんな。」
灯和「あんま言わないで……__照れちゃう……__///」
竜翔「……うん!血は止まってる。この矢の魔力もこの子には影響してないみたい。しばらく安静にしとけば完全に治るよ……!」
灯和「よかったぁぁぁ……(ポロポロ)」
天舞「何でまた泣くんだよ!?」
火影「……とにかく、早く布団に寝かせたほうがいいな。」
灯和「あ、そうだね……じゃあ、あっちにしよっか。火影、お布団出してきてくれる?」
火影「わかった。」
沙雪「__…………んぅ…………__」
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--- -次の日- ---
竜翔「__……わぁ……__」
天舞「……んぁ?竜翔何読んでんだ?手紙?」
竜翔「あ、えっとね!昨日の夜、華竜に手紙書いて鷲さんにお手紙届けてもらったんだけど、すぐにお返事来てね!あの子の着物届けてくれるって!」
天舞「お、華竜か!あいつ器用だもんな!なぁ、俺も手紙読みたい!!」
竜翔「え……いいよ?いいけど……」
__パサッ……__
__パラパラ……__
<***いつしかと待ち聞こえさせつる御文の、今日なむ、ようやく見参に入りたる。嬉しさに胸ふたがり、落つる涙も堰き止めがたう候ふ。それにしても、この奉られたる紙のうるはしさ、墨つきのいとめでたく、流るるがごとき御手跡のあてやかなること。世にこれほどに尊き文字を遊ばす方、兄君のほかにまた誰かはおはすべき。否、あるまじきことなり。心ばせ優に、容貌すぐれ、何事につけても類なき我が兄さまを思ひ聞こえさするに、わが心はただただ、めでたき心地のみ満ち満ちてなむ。聞こえまほしき恋ひ心のあふれぬれば、この筆の進むを、え止め侍らじ…………***>
天舞「……長くね?これ何mあんだよ?しかも全部くずし字じゃねぇか!?__華竜達筆だな……__」
竜翔「……そうなんだよねぇ……」
天舞「お前これ毎回?」
竜翔「うん。」
天舞「全部読むの?」
竜翔「……うん。華竜が書いてくれた手紙だからね……」
天舞「何時間かかるわけ?」
竜翔「__……半日……くらい。__」
天舞「……頑張れよ。」
竜翔「__……うん……__」
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後編 〜完〜
【ついでに一言】
①今回の話を書くために、プロローグ見直したんですよ。そしたらですね、火影、低体温症の患者に火を近づけようとしてましたね。やめて。急に体温上げたら心停止して死んじゃう。実際は、首筋や腕の下などの、太い血管が通ってる場所がいいらしいです。無知なせいで我が子を殺しかけてしまった。失態。ごめんね。
②華竜の手紙を現代語訳すると、【「いつ届くのかなぁ」ってず〜っと心待ちにしていた兄さまからのお手紙が私のところに届いたの!もう嬉しすぎて胸がいっぱいになっちゃって、涙がポロポロ出てきて止まらないよ…。それにしても、この贈ってくれたお手紙の美しさも、お墨の素敵な色合いも、まるで流れるような兄さまの綺麗で気品のある文字も、本当に素晴らしすぎるの!世界中で、こんなに尊くて美しい文字を書ける人が、兄さま以外にいるわけないよね?うん、絶対にいない!優しくて風流で、お顔もすっごく格好よくて、何をやらせても完璧な自慢の竜翔兄さま。そんな兄さまのことばっかり考えていると、私の心は、ただ幸せでいっぱいに満たされちゃうの。兄さまに伝えたくて堪らない、この大好きで恋しい気持ちがあふれちゃって、もう、筆を持つ手が止められそうにないよ!】になります。あの後竜翔は、約5000字の手紙を、8時間かけて解読したそうです。