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昼下がり、微熱
初夏の昼下がり、ただ一人で街を歩いて、私は普通になりかけていた。
他の子より早く学校から帰って、ぼんやりとした空を眺める。直視できないくらい眩しい太陽が、目をつんざいた。
「はぁ……。あっつ」
微熱を出したおでこに手を当てて、今はどれくらいの温度になっただろうかと、ちょっと確認してみる。さっきよりは下がったものの、まだ少し熱を帯びているようだ。
まさか、ストレスが原因で熱が出るとは思わなかった。しかも学校で。ストレスが原因で腹痛や呼吸が下手になった事はあるが、まさか熱まで行くとは。症状としてはただの軽い微熱だが、それでも驚いた。自分がこんなに助けてほしいと思っているなんて、まさに衝撃だった。
ふわふわとした微熱を持って、みんなが五時間目の授業を過ごしている中、私はたった一人で、淡々と帰路に着いていた。あと十分くらいで帰れそうだ。
クラスのみんなは、今の時間は何をしているだろうか。確か、時間割には音楽と書いてあった気がする。リコーダーでも吹いているのだろうか。いや、そういえば今の単元は歌だったか。じゃあ、歌のテストとかか。クラスメイトが見ている前で歌わせるなんて、音楽の先生も中々に残酷だ。いや、違うな、授業内容を決めているのは政府か。もっと正確に言えば文科省か。じゃあ本当に酷いのは文科省だった。みんなの前で歌うなんて、私だったら恥ずかしくてできないな。みんな、頑張ってるのかな。
初夏の昼下がり、浮いたような脳の中、私は少し虚しくなった。今日も他の子達は頑張っているのに、私は別室で惨めに熱を出して、早退して、何をしているんだろう。私は何がしたかったんだろう。
体調不良だからしょうがないという気持ちと、私は弱いんだという気持ちがせめぎ合って、心がぐちゃぐちゃに汚されていった。
遠くでセミが鳴いている、悲しくて、嬉しくて、胸が張り裂けそうな、それでも歩く、初夏の昼下がりの事だった。私は、微熱を持っていた。
小説が書けなくなったので、リハビリです。これから数日は、リハビリで短い作品を出すと思います。