公開中
花火の上がる前に
**と て も な が い で す**
**脅 威 の 4 0 0 0 字 超**
多分「思ってたんと違うと思う!!」
「何この低クオ、ずっと空白じゃん」
って感じすけど温かい視線で見守ってください国語3なんで(?)
「危な…」
ここで僕の意識は途切れた。
---
目が覚めた時には何処か知らない場所にいた。
「……?」
どこにいたのか全く思い出せない。
何があったのか分からない。
ここがどこなのかわからない。
「……」
僕の名前が分からない。
でも
だけど。
誰かが
「花火大会の日の初めの花火が上がったらさ」
この一言だけが何故か僕の頭の中に取り残されていっている。
---
「藤木さん起きましたか」
藤木?誰?というかここどこなんですか?
「あ…えっと…」
「理子さん理子さん!起きられましたよ!」
「え…あ…あぁ……!!」
誰かが僕の隣で泣いてる。
誰。
誰なんだよ。
「もう目覚めないかと思った」
は?
何言ってんだこいつ?
「見た感じ後遺症などは残っていない感じですね。」
…!
その時僕はやっとここが病院だということに気がついた。
でも貴方達は一体誰。
「あ…の」
「ウワァァァァァァァアァァァァァァアァアン‼︎‼︎‼︎゛ーア゛ーッハア゛ーーン!」
「………の」
「ちょっ…理子さん落ち着いてください議員みたいになってます」
…………
「ごめんね…うるさかったよね…」
情緒不安定か!!
彼女達は何やら難しい話をし始めたので外を見ておこう。
やはり何もわからない。
空が青い、街、くらいしかいえない。
僕から一つ聞かせてください。
「あの」
話していた2人が一斉にこっちを見た。
「貴方達は……一体誰なんですか」
---
「僕は、誰ですか」
静まり返ってしまった一室。
「……あの?」
「あえ?私だよ私」
「………?」
たしか‥藤木?だっけ…。
じゃあ…そこの泣いてる人は母親なのか?
「じゃあ…理子…さん?って僕の」
「お母さんだよ!!私の事忘れてるなんて流石に悲しすぎるよ?」
……ごめんなさい、何も覚えていな…いや、殆ど覚えていないもので。
「後遺症は記憶喪失ですか、どうしましょう」
記憶喪失、か…。
まさか自分がなるなんて考えもしなかった、最早こんな珍しいことなんてこの世に存在しないとさえ思っていた自分を恨む。
[花火大会の、日 の 初めの花火が 上が っ たら さ]
…?
耳鳴りか。いやなんでこの台詞だけが。
……
(…?初めよりなんだか聞き取りにくい…?)
花火大会…っていつなんだろう。
「花火大会…っていつだろ」
いつしかぼやいていた。
2人が驚いたようにこちらを見る。
「なんだかなんでそれだけ覚えてるのか不思議だな、8月10日ですよ」
8月10日…。
デジタル時計を見る限りまだまだ日は有りそうだ。
「なんでそんなことだけ覚えてるのかわからないけど、少しでも記憶があったならそれで良かった」
優しいな、僕のお母さん。
「それでは少し…医者を呼んできますので。安静に。お母さんはあの大変言い出しにくいのですが面会時間終了時間なので」
「あ…あぁ!じゃあ元気になったら迎えにくるから、いい子で待ってなよ」
「う…ん」
ドアがしまった部屋は静寂を取り戻した。
窓の奥には目が痛くなる青々としてうざいほど延々と広がる入道雲を着た空が街を包んでいる。
---
静寂、それは時に大きな不安を人に及ぼすものだ。
それを思っているということは、僕がその状況に直面していることくらい安易に想像できる。
どうやら僕は交通事故に遭ったらしい。
後遺症は記憶喪失、ただそれだけだった。
手足は問題なく動いてくれる。
問題としては、暇の潰し方だ。
何もすることがない静寂しか無い部屋で何をしろと言うのだ。
時間がとてつもなく長く感じられる。
ふと、手を上に伸ばしてみた。
「……、」
傷?
手に大きな線。
頭が痛んだ気がして、目を瞑った。
まだ僕は僕の名前を知らない。
病院にしては静かな、だけど騒がしい。
人の声が全く聞こえない、と言うことに気がつくのには時間が掛かった。
病院ならばもう少し、患者や医者の会話が聞こえてもおかしく無いはずだ。
騒がしい。
何やら、やけに換気扇や風の音が大きい気がする。
きっと気のせいだろう、僕の耳が記憶を失った関係で敏感にでもなってるんだろう。
僕が見ている都会の景色は今日も変わらない。
ループしているように、車が行ったり来たり、人が行き交ったり。
もはや眺めすぎて雲の位置すら変わってないように思えてくる。錯覚とはそう言うものなのだろうか。
---
病院なんだから、母以外にも知り合いの1人や2人、来てもおかしくないだろうに、誰も来ない。
「藤木さん」
「あ、お医者さん」
「私看護師ですよ、何回言ったら」
すみません…物覚え悪くて…。
「お医者さんが来るので、安静にしていてください。」
麻酔に引きずられ、意識が途切れてしまった。
---
記憶喪失がすすんだみたいだ。
なにか大切なものを忘れてしまったようで、でもそれがなにか分からなくて無性に悲しい。
「藤木さん、夕食です。調子はどうですか?」
「………何も、思い出せなくて。貴方はだれですか、僕は誰ですか、この」
人が僕の口を塞いだ、息が苦しい。
「そのうち分かりますよ。ご飯食べててください」
バタン、とドアが閉められた。
1人取り残された部屋の中で、呆然とする僕はいったい誰だって言うんだ。
食事はおいしかった。
ふとそこにあったカレンダーを見る。
雑な汚い字で、「花火大会。誰かを助けて」誰かを助けて…?
---
けっきょく何もわからないまま1日が過ぎた。
なにか大事なことを忘れてる気がするのになにかわからない。
こわい。これ異常なにがなにかわからなくて記憶がなくなるのがこわい。
なにか急にいろいろなことが抜けおちたきがする、どうしたのだろう。
「藤木さん、手術へ来てください」
あの知らない人、みたことある。
なにか僕に酷い事をした、きが、する…?
「いやです。いきたくない、です」
僕は断った、いやな予感がしたからだ。
もうこれ異常わすれてしまえば、僕の存在か消えてしまう気がするんだ。
腕に痛い間隔が走った、すぐに意識がなくなった。
---
うるさい換気扇のおとで目が覚めた。
カレンダーに書かれた、「花火大会。誰かを助けて」。
誰かって誰だよ。
でもなにか、わすれてしまった記憶の断片が拾えた気がして、目から水が流れてくる。
ぼろぼろとこぼれるその液体を見つめて、何か思い出した気もするが、きっと気のせいだろう。
やけに青い空、ループしてるみたいな景色。
見慣れた光景が違和感のように感じてしまった。
手が動かない、足が動かない。
どうしたんだろうか。
少し前までは不自由なく動かせたのに、手足が動く事を忘れてしまったみたいに、綺麗に動かない。
こんなのが夢ならいつまで続くんだ、早く目覚めてほしい、という無理な願いを天井に願った。
---
きゅうにいろいろなものが忘れたみたいで、まくらもとのテーブルに置かれたかみにかかれた文字が読めない。
「花火大会。誰かを助けて」
花 。 かを、けて…。
きおくそうしつって、今までのがくしゅうも全部わすれてしまうらしい。
たんごのいみがわからないから、なんとなくでいろいろなことを考えてる。
これがごいりょくかいむというやつか。
とりあえずなにもかんがえたくないし、何を忘れてるのかわからないからねむりくすりに身を任せようと思う。
---
「花火大会。誰かを助けて」
だれがかいたのかわかんないもじでかいてある。
「藤木さん、記憶は消えましたか?」
「あなたは?」
だれかわからないおんなのひとがはいってきた。そしてぼくにきいた。
「よかった、このまま行けば何も覚えてないままですよ」
なにをいっているんだこのひとは。
ぼくをだれかとかんちがいしてるのか?
「…うん」
とりあえずへんじしておこう。
おんなのひとはにこにこわらってごきげんそうにへやをでていった。
---
も 、ことば け ちて、もの かん るのも き なってき 。
「藤木さん、やっと記憶抜けてきたみたいですね」
「……の、…おくは、なく………は、……の………?」
の、 んなのひ のせい ?
に かんが ら いぼ み たの ろ か。
こん に げ を 、 のし の ろうか。
んが られ いことが、 つ い わな た。
---
「花火大会。誰かを助けて」
う 、 か
が 、 。
。
お 。
---
「遅いよ…」
その懐かしい声を聞いた瞬間、全てを思い出した。
---
空白の一日間以前、そして僕が記憶を失った10日間は、記憶が消えたままの状態で僕の記憶の中に在る。
「…知ってるか?」
「何が」
「自分がされようと……いや、されていた事」
少ない空白の記憶を辿る。
しかし何も分からない、記憶喪失の治療をしてもらっていた、ということでは無いだろうし。
「…知るわけないよな、こんな事。」
そう言って隣に座る|赤石龍奇《あかいしりゅうき》はラムネを飲み干した。
「…そう言うってことは、龍奇は僕が何されてたのか知ってるの?教えてよ」
「…正気か、なかなか酷い話だよ。それでも聞くってんのか?」
「平気。自分のことは自分で知ってたい」
「よく言うよ。後から後悔しても知らねーからな。……まず、初めからだ。最近、『人間の肉体を持つAI』の開発をしようと、世間の科学者たちはごちゃごちゃしてる。あいつらは『協力者募集』と、な。」
体から冷や汗が出てきた気がした。
呼吸が浅くなる。
「…平気か?」
「うん、大丈夫、続けて」
「…お前、交通事故に遭っただろ。……俺を庇って。そのタイミングをお前のお母さんはチャンスだと思ったわけだ。」
「え……なんでお母さんが…?」
「協力者、もしくは協力者の知人には多額の金が協力金として送られるんだ。1億円ほどな。それをお前のお母さんは狙った。|白也《はくや》が交通事故に遭った時、すぐに科学者の野郎に白也を連れてったらしいな。ま、お前はそん時意識なかったからわかんねーけど。」
体がぐらつく。
母は自分を捨てて金を選んだ、ただそれだけだ。
知ってもなお、脳が理解を拒んだ。
「俺の知り合いに科学者の仲間野郎がいるんだけど、そいつが言うには『人体AIを作るには、感情や記憶があると厄介』だそうだ。お前が記憶喪失だと思っていたのは、あいつらによる作業…あいつらのせいなんだよ。そう言うこと言われなかった?」
「…そういえば看護師さん?がなんか記憶が無くなっててよかったみたいなこと言ってたような…まさか」
「そういうこと。記憶が無くなった弊害で言葉が理解できなかったお前はなんのことかわからなかった。優しくされているように思えたのはお前が言葉を失っていたから。正直なんと言われようと何言われてるかわかんなかっただろ、それを良い事にその看護師と名乗ってた研究員はお前の記憶の消え具合を観察してたんだな。」
そういえば。
ずっと気になっていた事。
「そういえば龍奇、花火大会の初めの花火が上がったら何するつもりだったのさ」
「……なんでそれ聞こえてんだよ」
「?」
「なんにもねーよ。」
龍奇は深呼吸した。
「…喉乾いた、お前ラムネ飲まないんだったらくれよ」
「……あ、え、駄目僕が飲む!」
動揺を隠すようにラムネを喉に流し込んだ。