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シーザーが死んだ日
少し前に書いた小説です。誤字脱字があったら知らせてください。
「…え?シーザーが死んだ?」
1939年、5月。冬ももう終わったなぁ、と思いながら干したばっかりの布団に顔をうずめてウトウトしていたときだった。急にチャイムが鳴り、顔をのぞかせてみると、そこには暗い顔をしたジョセフが立っていた。
「あれ、ジョセフじゃん。どうしたの?そんな顔して。…スージーQと結婚したばかりでしょう?…もしかして、スージーQとなにかあった?」
ニヤニヤしながらそう言ったが、ジョセフは、何も答えずうつむいているだけだった。私は、その時に何かを少し察していたが、「まあそんなわけないだろ」と思いながらまたジョセフに話しかけた。
「あっ、そういえば、シーザーはどうしたの?シーザーももう帰ってきている頃でしょ?それとも寄り道でもしてるのかしら…」
「……シーザーが、死んだ」
「…………え?」
まさか。そんなわけがない。シーザーは、そんな簡単に死ぬ男じゃない。そう思ったものの、私はすごく、ものすごく焦っていた。
「そ、そんなジョークはやめてよ…面白くないわ、そんなの…」
ジョセフは唇を噛み締めながら、まるで、唇を噛むのを緩めたら今にも泣き出しそうな表情でうつむいていた。
「ねぇ、何か言ってよ…冗談だって、言ってよ…!」
「…シーザーが死んだ。これは事実だ。冗談なんかじゃ、ない…」
ジョセフによると、シーザーは地球外生命体との戦いで、瓦礫の下敷きになってしまったのだという。
そういった後、ジョセフは深々と頭を下げ、弱々しく「本当にすまない…俺の責任だ…」と言った。
「…ジョセフのせいなんかじゃ、ないわ…」
「…そうだ!バンダナとかは?何か、残っているものは無いの…?」
「見つからなかった。何も…隅々まで探したが、残っていなかった…」
「…そう。ありがとう。」
その時、運よく、運悪く?わからないが、ジョセフの携帯から、電話の着信があった。
「…すまん。電話が来ちまった。…じゃあな。」
「…うん。じゃあね。」
「……すまなかった。」そう一言残して、ジョセフは帰った。
私の家にはたった一つの事実と、すすり泣く声しか残らなかった。
「何が『大丈夫』よ…っ…バカッ!」
あれは、シーザーが旅に出てくる少し前――
「大丈夫だって。すぐ、帰ってくるさ。」
「本当に…?」
「ああ。本当さ。」
「でも…帰ってこなかったら…?」
「そんなことないさ。絶対に、帰ってくる。」
「…うん。分かった。信じるよ。…行く前に、写真取らない?」
「わかった。何枚でも撮ろうじゃないか。」
「1枚でいいよ〜」
…そんな事を話していた。あの時の、運命を知らない私たちは。
「戻ってくるって、言ってたのに…」
ある人は神様をいると信じているが、私はいないと思う。いや、『思う』じゃなくて、いない。断定できる。だって、神様がいたら、こんなひどいことになっていない。シーザーは死んでいなかったはずだ。
部屋の額縁に飾ってあったシーザーと一緒に撮った写真を見る。そう、出発する前の、たった1枚。
「…もっと、写真撮っておけばよかったな…」
でも、後悔しても遅い。シーザーはもういないのだから。
そう思ってくると、シーザーが死んだ、という実感が急に、ものすごく湧いてきた。涙が溢れてきた。
「もう、生きてる意味なんてないのかな」
一瞬そう思ったが、そんな事を考えてしまったら、私の心が壊れてしまう。私はもう、シーザーのことも、自分のことも、考えるのをやめた。
――2年後
シーザーが死んで、もう2年がたった。今までの私は、バイトをしたりしてなんとか生きていた。顔だけは良いから、接客業をしていたが、ある日、客が私の接客にムカついたらしくて、ビールの瓶でいきなり頭を殴りつけられた。他の人がなんとか止めてくれたらしい。病院で意識を戻したときには、私は、目が見えなくなっていた。いや、正確に言えば、見えないんじゃなくて、視界がすごくぼんやりしているような感じだ。幸いにも、頭部の骨折はしていなくて、顔面はいつも通りらしい。
目が見えなくなって3ヶ月後、私は街に買い物に出かけていたが、路地裏の子供たちに捕まり、顔面をやけどしてしまった。そんな事があって私はもう、必要以上に外に出かけなくなっていた。
「…っシーザー!」
「……夢か」
私はいつも、シーザーの夢を見る。シーザーと、他愛もない話をするだけの夢。それが逆に辛い。悪夢ならどれほど良かったか。シーザーの夢を見終わったときに、いつも絶望する。ああ、シーザーはいないのか。そう思うと、本当に苦しくなる。いつも。
「…外に、出ないとな…」
街に出るときは、フードを深く被っている。もし町中にシーザーがいたら、こんな顔は見せられないから。シーザーはもういないと、分かっているのに。
出かける準備が終わって、外に出ようとしていた時、チャイムが鳴った。
「こんな家になんだろう…?」
こんな家に用事のある人間は数人しかいない。だが、ジョセフやスージーQ、リサリサ先生は今何かと忙しいはずだ。
「…どちら様でしょうか。」
ドアを開ける。…そこに立っていたのは、死んだはずの、シーザーの姿だった。
「やあ。俺だ。」
「…え?」
なんで。シーザーはもう、この世にいないはずなのに。
「もしかして、たったの2年で顔と声を忘れたんじゃあないよな?」
シーザーはそう言って、ニヤッと笑った。忘れてなんかいない。だって、愛しの恋人を忘れるわけないじゃないか。
「忘れてなんかいないわ。…だけど、なんで、生きているの…?」
自分でも声が震えているのがわかる。幻覚なんじゃないか。そう思ったけれど、確かに、そこに存在していた。
「SPW財団っていう組織に助けてもらったんだ。」
「SPW財団…?」
「まぁ…大きい医者みたいなものだ」
「そう…良かった…生きていて…」
「反応が薄いから、嬉しくないと思ったよ」
「そんなわけ無いわ。嬉しい。すごく…」
シーザーの話によると、もうJOJOとリサリサ先生達にはもう知らせたらしい。
「でも、なんで2年も存在を、私にだけ知らせていなかったの…?」
「傷が治ってもないのに恋人に会いに行くのは格好がつかないだろ?」
そう言って、シーザーはふにゃり、と笑った。そして、寂しそうに笑った。
「……なあ、そのフードを、取ってくれないか…?」
「…え」
無理だ。絶対に。だって、こんなひどい顔を見せられるはずがない。
「…ごめん、これは、無理。」
「なぜだ?」
「こんなひどい顔、シーザーに見せられない。」
「何言ってんだ。君はいつもきれいだろ?」
「本当に。本当に見せられないの。こんな顔を見たら、私のこと、嫌いになっちゃうわ」
「嫌いになんてならないさ。それは君が一番わかってるだろ?」
「でも」
その時、風が吹いた。そして、深く被っていたフードが外れた。その時のシーザーの顔を、私は覚えている。少し驚いた顔だった。そして、少し、泣きそうな顔だった。
「私、こんなにひどい顔なのよ…」
泣いてしまった。シーザーの前では泣かないと思っていたのに。笑顔しか、見せないつもりだったのに。
「何言ってんだ。今でも、十分綺麗じゃないか。」
シーザーはお世辞で言っているんじゃない。本心で言っているんだ。なぜか、そう感じた。
「君がこうなったのは俺の責任だ。俺が、2年も存在を知らせていなかったから、」
「あなたの責任じゃないわ」
「だけど、」
「違うわ。私の責任よ。私が、シーザーは生きているって、信じれなかったから…」
「じゃあ、どっちの責任でもあるな。」
そう言って、少し、いたずらっぽく笑った。
「…なあ、君を一生、絶対に幸せにする。もう、離れなんかしない。だから、」
シーザーが結婚指輪を出した。
「俺と結婚してくれませんか」
その顔と言ったら、もう、人類を破滅できるんじゃないかと思うような、世界一かっこいい顔だった。
「…馬鹿ね。そんなこと聞いたら「はい」しか言えないじゃないの」
その時、まるで神様が「おめでとう」と祝福しているように、ウエデイングベルが鳴った。
もしかしたら神様はいるのかも知れない。だって、そうじゃないと、こんな幸せ、やってこないわ。
〜END〜
結構自信作なんですけど、どうですか?応援してくれたら嬉しいです。