公開中
1-3 親
しばらく隼人の家にいると、隼人の母親・綾乃が帰ってきた。
「ただいまぁ!あれ、紗絢ちゃん?久しぶりー!」
綾乃は酔っ払っているらしく、足元がおぼつかない。
「おかえり、母さん。久しぶりに遊んでたんだ。紗絢、そろそろ帰ろうか。きっともうお父さん帰ってきてるだろうし」
なぜか急に少し強引になった隼人。
なんでだろう、と考えたが、綾乃さんは酔っ払っているし、いろいろと大変なんだろうと納得し、部屋を出た。
数歩歩くと、紗絢の部屋の扉の前。
どうせ鍵は開いていないだろう、そう思いながらも一応ドアノブを回してみると、意外にも扉が開いた。
そーっと音を立てないように扉を閉め、廊下を進んでいると、リビングに明かりがついていることに気づく。
まさかまだ母親が起きているのか、さっきより一層音を立てないように気をつけてリビングへの扉を開ける。
父親が一人で、テレビで野球を見ていた。
「…ただいま」
「紗絢。今までどこ行ってたんだ?」
「…友達の家に居させてもらってた。お母さんに締め出されたから」
「…そうか」
お前のせいで締め出されたんだぞ、と遠回しに言ってもまるで聞こえていないかのように無視をする。
また、隼人の家に行ってもいいかな?