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苺の赤は、幸せの赤。*1 君が死んだ横断歩道で
注
「山根華心」は私のキャラクターで、また「『消えたい私は夢を見る』サブキャラ募集!」という自主企画にも出してる子です。どっちかがパクリというわけじゃないのでご了承を(?)
あと何度も言うけど参加してみてください自主企画!(宣伝が通りますご注意ください)
「行ってきます」
私はドアを開けた。
今日は中学校の入学式だ。
坂を下りながら、その先を見る。
中学校は目と鼻の先にある。その手前に、横断歩道がある。
あそこは――弟が、|流星《りゅうせい》が死んだ横断歩道だ。
目の前で、2歳くらいの女の子が赤信号の横断歩道に取り残されていた。
それを見て、帰り道だった流星は、ランドセルを捨てて飛び出した。
今思えば、優しい彼なりの、幸せな自殺だったんだと思う。
いじめられていたけど優しすぎて、私にも言えなかった彼なりの、最高の死だったんだと。
さいごに発した一言は、うまく聞き取れなかった。女の子が、周りを染めていく赤がどんなに恐ろしい色かも知らずに、轢かれそうになった恐怖ただそれだけを見て、流星の腕の中で泣きじゃくっていたからだった。
女の子はかすり傷だけで助かった。流星は、しばらく意識があったけど、眠ってから意識が戻ることなく1日で亡くなった。
事故は、女の子が飼い犬を追いかけて飛び出したのと、トラックの運転手の居眠り運転が原因だった。しかも、女の子の母親はもう1人の赤ん坊の世話で目が離せなかったうえに、そのトラック運転手は気づかないうちに手を骨折していて、ただの打撲だと思ってそのまま運転していたという。
怒りと悲しみをぶつけるところがなかった。大切な人の死が、ただ、小学生の私の目の前で、ぐるぐる廻っていた。
そんな、悔しさの漂う横断歩道を、私はこれから毎日渡らなければいけない。
本当だったら、2人で毎日渡るはずだった横断歩道――。
今でも花が供えられている。
私はそこにしゃがみ込んで手を合わせた。
会いたかった。
会いたかった。
会いたい。会いたい。会いたい――。
涙が、落ちた。
それを、2粒目は堪えて、学校の方を、横断歩道の対岸を見た。
……目を疑った。
流星がいた。
あのときの服のまま、こっちを見ていた。
目があっていた。
そして、流星は、諦めのような表情を浮かべ、赤信号を渡ってきた。車が何度も突っ込んだけど、それはすべて貫通し、何ごともなかったように走り去った。
そして、私の目の前に立って、言った。
「驚かないで。きっと消えてるけど」
そう言って、すっと消えた。
その間に流星が笑うことは、1度もなかった。
入学式もぼんやりしながら過ごして、お母さんと家に帰った。
その道中で、お母さんに言った。
「今日ね、ここで流星を見たんだ」
お母さんは、そう言うと、不思議な顔をした。
そこまでは予想できたけど、私が思考停止したのはそのあとだった。
「昼なのに?」
「……え?」
その言葉の意味を理解したのは、家に帰ってからだった。
|仏壇が、なかった《・・・ ・・・・》。
じ しゅ き か く や っ て ちょ(しつこい)。