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青い秋
「はじめまして。|佐伯瑠衣《さえきるい》です」
ぺこりとお辞儀する。みんなの視線が、一斉にわたしを貫く。刺す。残念そうな視線。転校生と聞いたら、ミステリアスな子か美男美女なんだろう。
まあ、当たっている。
わたしは呪いがかかっている。11月19日までしか生きられない呪いだ。なぜかは知らない。先祖代々ということでもない。ただ、神様がわたしを生きるための生贄に選んだ。全国の中で、ただ普通に。わたしたちのことなど知らず、ランダムに。それがわたしだったというわけで、決して特別な理由なんてないんだろう。
「よろしくお願いします」
普遍的な見た目。わたしはそのまま、すました顔で席についた。
ここに引っ越してきたのだ。そこでなら、なんとかなるかもしれないから。
みんな、わあわあと喋り始めた。ああそっか、休み時間か。わたしを生贄なんて知らず、ただ普通の子ども、同級生だという感じで。
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青春、というものがある。アオハルともいうらしい。
人生における、キラキラと輝かしくて光る時代。
人生における、とんでもなく懐かしくて、あとから恥ずかしくなる時代。
いろんな意見があるだろう。
青に、春。春は出会いと別れの季節。だから、多くの青春ストーリーは春から始まり、春で終わる。
だが、わたしは秋に生まれた。そして、秋に死ぬ。なんと美しく、儚い物語なのだろう。
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呪いのことは無闇に口外してはならないらしく、わたしは寿命とあえぎながら生きる。打ち明けることもままならず、わたしは心の中で、静かに苦しむ。
青い秋。それがあれば、どんなにいいのだろうか。青秋。せいしゅん、じゃなくて、せいしゅう。それがあっても、別にいいじゃないか。運動会、修学旅行、社会見学、文化祭。ほらみろ、秋にもイベントはいっぱいある。なら、秋で青秋してもいいじゃないか。
そんなことを思う。思うしかないのだ。だって、喋りかける人は誰もいない。喋りかけようと思っても、喋ることなんてできない。
これだから嫌なんだ。
わたしは、呪いをかけられている。ああ、やっぱりここでも、秋までしか生きられない。青い秋を、青秋を過ごすことができないままで。
呪いが解けない。解けるはずなのに、解けないのだ。呪いという名のいじめは、わたしをずっと縛り付ける。