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1「なぁ。俺、結構頑張ってるくね?なんで視聴率こんな低いの?」
十年前、この現実世界に異次元の扉が開いた。
中に入った最初の捜索隊は、中にいる凶悪なモンスターたちになすすべもなく蹂躙されたらしい。
人々はその空間、存在のことを「ダンジョン」と呼んだ。
各国の政府は人間の脅威「ダンジョン」に対抗すべく、様々な機関を作った。
さて、今は現在。最早ダンジョンがあって当たり前となり、生活の一部とさえなっていた。
危険なダンジョンに入る職業を「探検者」といい、まだまだ未知の多いダンジョンの情報を記録することを義務化した。
その手っ取り早い方法というのが、「ダンジョン配信」だ。
俺、|東雲明《しののめあきら》はダンジョン配信をしている探検者だ。
それもただの探検者じゃない。なんとランクがA。
これは上から二番目のかなりの高ランクなんだが⋯残念ながらリスナーは少ない。
「なぁ。俺、結構頑張ってるくね?なんで視聴率こんな低いの?」
【コメント欄】
コメント:それをリスナーに話す所かな
コメント:実力はあるんだけどなぁ⋯
コメント:ま、まぁ頑張れよ
コメント:俺等が見てるよ
コメント:いいからダンジョンの中に入れ
配信を始め挨拶もなしに開口一番にそう言った反応がこちらです。
まるですっかり冷え切った夫婦の会話ぐらい冷たい⋯。
「へーい。じゃあ今日は50層からスタートでーす」
やる気のない声で簡潔に配信内容を話した俺は転送用の魔法陣の上に立つ。
ダンジョンというのは基本、100層以上ある。
そして、層が深くなればなるほど敵が強くなっていく。
今回潜るダンジョンは「火影ダンジョン」という名称のダンジョンで、
全部で120層。難易度はまぁまぁ高め。
「そして取れる素材を換えてくれるお金もまぁまぁ高め」
コメント:口から出てるんだよなぁ⋯
コメント:考えてることが手に取るようにわかる
コメント:素直ってことでおk?
コメント:素直でもないだろ⋯
コメント:ゲスい
「ひどい言われようなんだけど?」
50層に転送されつつコメント欄とプロレスする。
もうこんなやり取りにも慣れたなぁ。なんて感慨に浸る。
すると、そんな感慨には浸らせないとばかりに何かが現れた。
巨体の鬼のモンスター。――――オーガだ。
「⋯ごめんオーガ。今じゃないかも⋯」
コメント:当たり前のように対話を試みるな
コメント:初手でオーガかー
コメント:やっぱレベル高いなぁ
コメント:今じゃないってなんだw
オーガの空気の読まない登場に不満を口にするも、オーガには通じなかったらしく。
「グォォォォオオ!!!」
「声デカァァアアア!!」
咆哮と共に突進してくるオーガ。俺はそれを避けつつ、愛用の剣を取り出す。
コメント:なんでコイツも叫んでんの?
コメント:両方うるさい
コメント:でも動きは無駄がないw
コメント:後はかっこよささえあればな⋯
剣がオーガの首を狙う。しかし、オーガが爪で剣を弾く。
「⋯チッ」
俺はオーガを飛び越えて後ろに周り、斬撃を加えた。
「グォォォォ!」という咆哮と共にオーガが後ろを向くが、遅い。
俺は鋭い斬撃でオーガの首を切り落とす。黄緑色の液体を吹き出しつつオーガは事切れた。
コメント:あっさり倒すー
コメント:スキルも魔法も使ってない所に狂気を感じる
コメント:舌打ちは良くないと思う
コメント:あ、魔石落ちてるよ
コメント:ドロップなしか⋯
「ふっ。まぁ?俺に?かかれば?こんな?もんですよw」
コメント:珍しくカッコいいセリフなのに言い方がなぁ⋯
コメント:ドヤ顔やめろ
コメント:もっとイケボで言って
コメント:さっきまでカッコよかった
「あれ〜?おかしいな。カッコいいセリフってネットで調べてきたのに⋯」
コメント:今ので台無し
コメント:あーあ
コメント:そんなことだろうと思ってたよ、俺は⋯
「今回こそはと思ったんだけどなぁ⋯あ、オーガ」
そんな緊張感のないオーガ狩りをすること一時間。
倒したオーガが50体を超えた時、何やらコメント欄が騒がしくなった。
コメント:|萌花《もか》ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:ん?なんか来たな
コメント:今、萌花ちゃんの配信見てきたけどマジだ。
コメント:え?どういう状況?
コメント:蜘蛛モンスターに捕食されかけてる
コメント:ひえ
|来栖萌花《くるすもか》。ここ最近人気のダンジョン配信者だ。
パッチリしたタレ目に、朗らかな性格の彼女は『ダンジョンの癒し』と呼ばれている。
でも確か⋯
「あれ?萌花さんってBランクじゃなかった?火影の推奨ってAランクだけど⋯?」
コメント:昨日Aランクになれたらしい
コメント:腕試しだーって張り切ってたよ。昨日の配信で。
コメント:いいから助けに行けよ
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:あー。連投始めたな。
「あー。わかった。わかったから連投やめて」
だんだんと不穏になってきたので、俺は40階層に向かいつつ、コメントに注意する。
一応デマじゃないか、萌花さんの配信を開く。
状況は最悪で、まだ食われてはいないが気絶しているのか蜘蛛だらけの中、ピクリとも動かない。
蜘蛛モンスターが近づいている様子があるので、時期に食われるだろう。
なぜ食われてないのかは、切り落とされたのか、足が二本しかなく動かしにくいからだと思う。
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:わかったってw
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
コメント:連投やめてって注意されたよね?マジでやめなよ。迷惑。
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
「他のリスナーのコメント見れないからやめてね?」
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
「⋯このアカウント追い出す時間も惜しいから追い出さないけど、他の配信者のところでやるなよ?普通に迷惑だから」
コメント:萌花ちゃんリスナーです。今萌花ちゃんがこのダンジョンの40階層で身動
きが取れなくなっています。お願いします。助けてください。
俺は一旦コメント欄を見るのをやめて、萌花さんを救出すべく40層へ向かうのだった。